大アルカナ21・世界 THE WORLD

大アルカナ

大アルカナ21・世界 THE WORLD

基本的な意味

宇宙生命としての記憶を思い出し、精神世界と現実世界を統合する。
世界観が完成する。

逆位置

世界観が完成しつつあるが、何かが少し違っている。

生命のストーリー

私達人間は、宇宙生命と同一の存在です。宇宙生命そのものです。
では何故、わざわざ未熟な人間として、この現実世界に生まれてきたのでしょうか?

宇宙も生命である以上、成長し、進化していく事を望んでいると思います。成長の為には、変化が必要です。何もない所には、新しいものは何も生まれません。
私達は宇宙生命という無限に広がる広大な海の、波のような存在。波は海そのものであり、海の働きを指す言葉です。私達人間が変化を起こし、成長するから、宇宙生命も一緒に進化成長していくのでしょう。

私達人間は、宇宙生命の記憶を無くし、個としての自我が芽生えていきます。自我とは自分と他者を違う存在と認識する心。こうして人間の心に、悩みをつくる土壌が整っていきます。他者を愛したり、他者と争ったりするのも、自分と他者が違うと感じるから生じる、心の働きだと思います。

では私達は、どのように成長して行けば良いのでしょう?
自身の個を磨き、この現実世界の中で、自分だけの自己表現をしていく事は大切です。でも個を意識し過ぎてしまえば、自分だけ良ければとなる傾向もありますね。
宇宙生命は、私達の為に、いつでも宇宙生命の記憶を思い出せるように、様々なものを残してくれています。例えば、私達の心を夜空の星々に映し出してくれたり、心の中に宇宙生命の声を聞く「子供心」を残しておいてくれたり・・・。

私達は、自分の力では超えられない壁に衝突する事で、必死に宇宙生命の声を聞こうとします。宇宙生命の記憶を思い出そうとするのでしょう。それを自分ではなく、自分の外にある存在のように捉えてしまった歴史があっただけなのかもしれないですね。

私達が目指すべきゴールは、宇宙生命の私を思い出し、そして自覚をし、現実の世界の中で、自分にしかできない自分の使命の道を生きる事なのだと思います。

ワールドのカードは、心の世界を旅してきた人が、現実世界に戻ってきた姿を描いています。
私達が生きる世界は、精神の世界ではありません。あくまで地球という、この現実の大地です。

しかし、心の世界を体験する事で、宇宙生命としての記憶を思い出しました。全ての人は本来同じ生命である事、そして個々の役割がある事、個の使命を一緒に叶えていく大切な人の存在・・・。それら全ての記憶を思い出し、また現実世界に戻ってきたのです。

ひとつの旅を終え、全てを統合し、今日からは、現実での新しい旅路が始まっていくのです・・・。

正位置と逆位置の読み方のポイント

ワールドは、全てのタロットの中で一番良いカードです。
宇宙生命である本来の私を思い出した上で、現実世界に生きていく事を象徴したカードであり、目に見えない世界の真実と、目に見える現実の人生を「統合」した世界観を得たと捉えました。

しかし、このような「世界観の完成」とも言えるような出来事は、一生のうちに何度もあるものではありません。全く理解もできず、一生を終える人も多いのではないかと思ったりもします。

確かにワールドのカードは、そう滅多に出るものではありません。しかし、全く出ないわけでもありませんね。
だから、実際のリーディングにおいては、本来の意味を踏まえつつも、もっと実践的に解釈する必要があるでしょう。

悪いカードをどう読むかも難しいですが、ワールドみたいな良すぎるカードをどう読むのかは、もっと難しいと思います。別記事で「良すぎるカードをどう読むか?」「悪いカードをどう読むか?」を書きますので、こちらも参考にしてください。

ワールドは、目に見えない精神世界と、目に見える現実世界に対する、自分なりの世界観が統合していくカードと考えました。
人生のうちにでも、段階的に自分の世界観を更新し、高めていく時期があるかと思います。
例えば、過去世の業の試練に合い、その時の自分では乗り越えられないと思えた壁にぶつかり、悩み苦しみ、そして内省する。この時、一時的に現実的なものよりも精神的な答えを求める傾向があるのではないでしょうか?
そして、その時点での自分なりの世界観を創り上げる。この答えが、正解に向かっていればワールド正位置が出てくるのではないでしょうか。

逆位置の場合、世界観が完成してきているが、「ちょっと何かが違う」という注意みたいに受け取ればいいのではと思います。
逆位置を、真逆のような悪い意味では捉えない方がいいと思います。

私の見解

ワールドは、本来の意味を確認しておきたいと思います。ウェスト版の大アルカナのストーリーの締めくくりだからです。

マジシャンから始まった人生の旅路は、ワールドで「完成」します。
マジシャンは、ワンド・カップ・ソード・ペンタクルスの4つの道具を揃えて、未来に向けて歩き始めました。
ワールドでは、それらが火・水・風・地のエレメントとして見事に統合する事で、真実を手にしたと読む事もできます。

ストレングス(力)では、自身の生命の奥底に、生命の絆や真実の力があり、それが不可能を可能にする力である事を示唆していました。

そして運命の輪というホロスコープをくぐり抜け、精神世界の旅路に入ります。運命の輪に人間が描かれていないのは、人智が及ばず、主導権が自分の手を離れてしまった事を意味しているそうです。運命に任せるしかないというイメージになるのでしょうか?

ワールドでは、全ての真実を知り、月桂樹のゲートをくぐり、現実世界に戻ってきたのは、両性具有の姿、つまり全てを手に入れたパーフェクトの存在、人間ではない高次元の存在として描かれています。

スターや太陽のカードもそうですが、裸が描かれているのは、人間としての欲望、自我やエゴを捨てた象徴を表しているそうです。

こういう解釈からも、精神世界の真実を手にいれる為には、人間としての何かを捨てていかねばならないという思想観を感じる事ができます。

私は今回のこの企画を始めるにあたり、タロットの本来の素晴らしさも尊重しつつ、東洋思想をベースに捉えてみようと思いました。

ワールドの表す人物は、決して人を超えた存在などではなく、人間そのものだと捉えます。
そして、この旅路は、自我やエゴを捨てて真実を得る旅ではなく、自我やエゴがあるからこそ悩みが生まれ、未熟な人間だからこそ失敗をし、苦しみや困難を乗り越えようとするからこそ、精神の旅路も続けてこられたのではないでしょうか?

そしてワールドの示す、現実世界に戻ってきた私達人間は、現実の中で、自分の使命を果たしていくのだと思います。
タロットの示す旅路も、全ては自分の内にあり、自分の外の世界に真実があるわけではないと思います。
どこまでも未熟な人間として、人間らしく読んでみようと思います。

もちろん「思想」とは、人間が理解できるように、擬人化したり、架空の存在を作りあげ、イメージをさせるものだと思います。いわゆる「例え話」ですね。
だからこうしてタロットの世界を改めて考察してみると、何を本当は表したかったのか、何が本質の意味なのかがしっかりと伝わってきました。

しかし「例え話」をそのままの意味で解釈してしまうと、誤解が生じます。特に「運命は決まっている」と解釈してしまえば、原因を自分の外に求めてしまい、努力を忘れます。結果として「依存」してしまうのだと思います。
正直、こういう例をたくさん見てきました。私も経験しています。

だから私は、この素晴らしいツールであるタロットを、「自分で自分の未来を創る」為の目的に、上書きしてみたかったのです。